擁護璽 堺市 2007.12.24 撮影:今駒清則
"YOGOJI" Monument to the tsunami. Photo : KOMMA Kiyonori
擁護璽の碑文(部分) 2007.12.24 撮影:今駒清則
"YOGOJI" Part of the monument inscription. Photo : KOMMA Kiyonori 東日本大震災の大津波災害を受けて、大阪では津波想定の最大を今までの2倍になる6.9mに見直されました。これは大阪市の上町台地(大阪城から四天王寺に至る丘陵)を除いて、大阪市街は完全に浸水し水没、東は生駒山山麓まで浸水、西は尼崎、西宮などから六甲山麓まで浸水すると想定されています。
(具体的には水面上昇した場合の浸水地域を地図上で確認できる Flood Maps でご覧下さい。)
大阪では今までも台風や津波で幾度も浸水しているので防潮堤などがかなり整っています。しかしこの最大想定6.9mの津波では何の役にも立ちません。とにかく大地震が起きたら高い所(市街地では建物の4階以上)へいち早く避難することです。
大阪を襲った津波には、近世では宝永地震津波(1707年)、「稲むらの火」の逸話で知られる安政南海地震津波(1854年)などがあります。安政元年(嘉永7年)は地震続きの年で、6月14日の伊賀上野地震と、11月4日の東海地震に引続いて翌5日に南海地震が起き、これが津波を引き起こしました。近くでは1944年の東南海地震と1946年に南海地震があります。東海から南海まで引続いて起きる大地震が100年前後の間をおいて起きていることから、近年は警戒が必要になってきました。
この安政南海地震津波については、大阪では2ヶ所にその被害状況と警告を標している石碑が知られています。
一つは大阪市大正橋東詰に建つ「大地震両川口津波記」碑(大阪市大正区「防災に関する情報」から「大正橋の津波碑〈大地震両川口津波記〉(pdf)」をご覧下さい)で、もう一つは堺市大浜公園に建つ「擁護璽(ようごじ)」碑です。
堺の「擁護璽」は地震翌年の安政2年7月に建てられ、津波被害の様子、津波の時は船に乗らないようにとの警告、神社に避難して助かったことへの感謝と、賜った璽を石に刻んで残した碑です。津波の状況と碑文の解釈については長尾武氏の「堺市・『擁護璽』、神から賜った璽(おしで)(pdf)」が詳しく、堺の三つの神社のお陰で難を逃れた印として建てられた経緯がわかります。全体が低地の堺では大道筋(紀州街道)と、それに交差する大小路がわずかな丘の稜線にある道となっていて、碑文中の三つの神社の三村宮(開口神社)、天満宮(菅原神社)、神明神社は紀州街道に沿ってあり、環濠内では最も高所になります。一方寺院は江戸期の都市計画により環濠に沿って建てられていたので津波や高潮の被害を受けやすく、避難場所としては適していないので神社へ避難するしかなかったとも言えるでしょう。
またかわら版「泉州堺津浪之図」(堺市博物館蔵)に見る浸水状況は、現在地図の Flood Maps による4~5mに相当しますが、安政当時の堺戎島、新地付近の土地は現在よりやや低かったであろうと推定して、3~4mの津波が襲ったのではないでしょうか。歴史に記録が少ない寛政3年の海嘯(「繰返された学童の悲劇 (5) 水難の地」2011年9月28日に掲載)は三宝や湊村が浸水しているので、これも3~4mの津波が襲来したと思われます。
ただ次に襲う大津波は最大で6.9mと想定しているため、その場合堺環濠内では前出神社と大小路の宿院付近以外のほとんどは浸水すると予想されます。これは丁度古代の海岸線と符合し、近くでは住吉大社が海岸線に、そして浅香浦が出現するような状況となるのではないでしょうか。
東日本で過去の津波を伝える石碑のほぼ半数が今回の大津波で倒されたり、所在不明になっているとの報道がありました。これらの石碑の多くは津波の最高到達地点に建てられているのが多いと思われ、今回の大津波の威力がそれだけ凄まじいものであったことがわかります。これは過去の津波記念石碑の位置は参考にはなりますが、安全圏を示しているものでは無く、想像を絶する意外な大津波があることを教えてくれました。
なお「擁護璽」は当初御陰山に建てた(長尾武氏)が、堀川を埋め戻す時に削平したため山頂から移転し、現在では大浜公園内の蘇鉄山の東麓にあり、安政南海地震津波の最高到達地点を示しているものではありません。(終)
シリーズ
繰返された学童の悲劇 (1) 石巻市立大川小学校
繰返された学童の悲劇 (2) 堺市立三宝小学校
繰返された学童の悲劇 (3) 慰霊の碑
繰返された学童の悲劇 (4) 低地の学校
繰返された学童の悲劇 (5) 水難の地
繰返された学童の悲劇 (6) 教育塔
繰返された学童の悲劇 (7) 擁護璽
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