大和の「つくりもの」 6 「大立山まつり」
"Otateyama-matsuri" (Dramatic diorama) Festival, Heijokyu, Nara. Photo : KOMMA Kiyonori
2016年1月31日
奈良県が冬場に少なくなる観光客の集客を願って新しい「まつり」を創製しました。平城宮跡の復元大極殿の広場で1月29日から2月2日にわたって開催される「大立山まつり」です。
「立山」とは奈良以外ではわかりにくいと思いますが、「つくりもの」のことです。かって日本各地の町や村で、店や家の一角に、住民が手近な材料を持ちよって伝説上の物語とか歌舞伎、時事的なテーマなどで場面を造り上げて飾り楽しむ行事がありました。今風に言えばジオラマです。
この「つくりもの」はテレビが普及するころから徐々に消えて行き、ここ奈良では現在3カ所で行われているだけになりました。橿原市八木町の「愛宕祭」、広陵町三吉(みつよし)大垣内地区の「立山祭」、御所市東長柄にある天満宮の「天神祭」です。(このサイトの「つくりもの」をご覧下さい。)
この「大立山まつり」では新たに4基の樹脂製四天王像の「大立山」を1億円で作製、大極殿前庭の四隅に置き、大極殿前には仮設ステージを設け、イベントとして各種の伝統芸能を演じます。
"Otateyama-matsuri" (Dramatic diorama) Festival Event, Heijokyu, Nara. Photo : KOMMA Kiyonori
その大極殿前のステージでの一コマ。「室生天地人の祭」の「龍の舞」、室生の龍穴神社にある龍神伝説を基に創作されたようです。
"Otateyama-matsuri" (Dramatic diorama) Festival, "Ogaito Tateyama",
Heijokyu, Nara. Photo : KOMMA Kiyonori
このまつりの中で最も貴重なのが実は広陵町大垣内の「立山」の展示なのです。「大立山の四天王」はこのまつりに造られたイベント用「つくりもの」ですが、大垣内の「立山」は町の伝統的な行事の中での「つくりもの」です。本来このまつりの中心になっても良い価値のあるものなのですが、なぜか門外の片隅に展示されていました。このまつりの企画者がその価値をよく知らない為なのでしょう。
"Otateyama-matsuri" (Dramatic diorama) Festival, "Ogaito Tateyama",
"Aristocracy of Tenpyo era", Heijokyu, Nara. Photo : KOMMA Kiyonori
大垣内の「立山」を見て行きましょう。展示の「つくりもの」はこのまつりのために造られたものです。
この場面は「天平の貴族」というタイトル。大垣内の「つくりもの」はいつも誰かの人物が中心で、あまり物語風のものは少ないのが特徴です。
"Otateyama-matsuri" (Dramatic diorama) Festival, "Ogaito Tateyama",
"Mythology, Amanoiwato", Heijokyu, Nara. Photo : KOMMA Kiyonori
こちらは「神話 あまのいわと」。今の大垣内にしては大変な力作。
常世の長鳴鳥を鳴かせ、枝に八尺瓊勾玉と八咫鏡と布帛をかけ、天児屋命が祝詞を唱え、天宇受賣命が岩戸の前で神憑りして胸までさらけ出し踊ると、天手力雄神が岩戸を開けて篭っている天照大神を現す、という場面を忠実に造ったもの。モーターで天宇受賣命が回り、岩戸が開閉するという工夫が凝っています。
"Otateyama-matsuri" (Dramatic diorama) Festival, "Ogaito Tateyama",
"Kaguyahime", Heijokyu, Nara. Photo : KOMMA Kiyonori
「かぐや姫」は翁が竹からかぐや姫をとりだす場面と、大きくなったかぐや姫が嫗といる場面を一度に見せる巧みな構成。
"Otateyama-matsuri" (Dramatic diorama) Festival, Tool of"Ogaito Tateyama",
Heijokyu, Nara. Photo : KOMMA Kiyonori
大垣内の「立山」で「つくりもの」に使われる道具も展示していました。ここも他と同様、青年の人口減少で「立山」行事の維持が難しくなってきているようで、この「大立山まつり」に県が2億円を使えるようなら、その一部でも県下の「立山」行事に人的助勢や経費助成をして、貴重な行事が継続できるよう援助して頂ければと思います。
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